携帯でも『不正接続』
知らぬ間に国際電話
パソコンでインターネットを利用中、知らぬ間に国際電話につながり、高額の利用料を請求される「不正接続」が問題となっているが、携帯電話でも同じようなトラブルが起きている。携帯電話会社は昨年十二月、苦情の多い地域への通話を休止したが、その後は、別の地域などに接続されるケースが目立ち始めている。(西尾 述志)
東京都の男性(48)は昨年十一月、携帯電話「au」の十月分の請求書を見て驚いた。
妻(46)、高校一年の長女、中学一年の二女が、それぞれ使っている計三台の携帯電話の通話料の中に「国際電話料金」の項目があったからだ。
妻は約二千八百円、長女は約八十円、二女は約二百四十円。通話先は、いずれもインド洋に浮かぶセーシェルで、番号も同じ。どれも深夜に利用したことになっていた。
男性は「三人とも、かけた覚えはないと言う。妻に至っては携帯電話自体をほとんど使わないのに…」とため息をつく。実際、妻は十月、男性の携帯電話に三回かけただけ。国際電話以外にもインターネットのサイトの利用記録があるが「使っていない」という。
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携帯電話「au」を運営するKDDIは、国際電話への不正接続は、一方的に送られてきた迷惑メールや、成人男性向け雑誌の広告に記載された音声情報番組の電話番号を、利用者が国際通話と気付かずにかけてしまうことで起きる-と説明している。
同社の携帯から国際電話をかける場合、国際電話識別番号と国番号、相手先番号を合わせた二十けた近い数字を一つずつ押す必要がある。
だが、届いたメールに記載された電話番号にかける時は、番号にカーソルを合わせた上で、二回ほどボタンを押すだけでかけられる。便利な機能があだとなった形だ。
「au」は二〇〇一年五月に国際電話サービスを始めた。利用者は特別に申し込む必要はなく、昨年十二月末現在、約千三百三十一万台が常に国際電話をかけられる状態にある。
苦情は昨秋に始まり、昨年十一、十二月の二カ月で約五十件に上った。KDDIは同十二月十六日、苦情が集中するセーシェルと英領ディエゴガルシア(インド洋)への通話を休止する対策を取ったが、その後は、衛星電話システムの「イリジウム」とモルドバ(欧州)につながる苦情が出始めている。
一九九八年九月に国際電話サービスを始めたNTTドコモの場合、〇二年五月以降に新規契約した人は、auと同じように特別な手続きなしで国際電話が利用できるようになった。昨年末現在、約三百三十五万台で国際通話が可能だ。
同社は、auのトラブルを受け、二地域への通話を昨年末に休止した。
苦情があるか調査中だが、インターネットの同社サイトでは、知らないうちに接続する恐れがあるとして、グレナダやセントルシア(いずれもカリブ海)など十一地域の国番号を掲載して注意を呼び掛けている。
J-フォンは〇二年六月から、国際電話のサービスを始めたが、別途申し込みが必要で、特に苦情はないという。ツーカーは国際電話サービスを行っていない。
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国際電話の番号はauなら「005345」、ドコモなら「009130」で始まる。こうした番号にかけないことが自己防衛策だが、今回の男性は「携帯電話に触っていないのに、勝手に国際電話にかかっていた」と訴える。
国際通話が記録されたのは、男性の妻や娘たち女性の携帯だ。電話会社が言うような成人男性向けの音声番組を利用する可能性は低いだろう。
本人が意識しないうちに電話をかけてしまう可能性について、インターネットのセキュリティー会社「シマンテック」(東京)の担当者は「悪質なメールには、開いただけで勝手にどこかに電話したり、メールを送ったりする種類もあると確認している。技術的にはウェブを開いただけで同じ現象を起こさせることは可能」と話す。メール通信やサイト閲覧をしたり、誤ってボタンを押したりするだけで、国際電話につながることはあり得るかもしれない。
各社とも携帯電話から、国際電話に接続しないようにする手続きができるので、国際電話を使う必要がなければ、休止を申し込んだ方が賢明だろう。
東京新聞