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登 大遊さん
登大遊(のぼりだいゆう)さんは筑波大学の情報学類4年生です(2007年、本記事掲載時)。学類2年のときにベンチャー企業「ソフトウイーサ」を立ち上げ、現在は開発も手がける代表取締役として活躍中です。つい先日の朝日新聞(2007年1月11日 朝刊 p.10)では、「天才世界挑戦状」という見出しで、紙面の4分の1を占める枠で大きく紹介され、今後のますますの活躍に期待が寄せられています。情報学類に所属する学生として、今、まさに注目の人です。
今回、その登さんにメールでのインタビューを行いました。各質問に対して、大変熱心に回答を寄せてくれましたので、ここでは、ほぼ全文をそのまま掲載させていただきます。登くんの人柄と、筑波大学での生活の様子を読み取れることでしょう。
Q.朝日新聞で「天才 世界への挑戦状」という見出しで大きく紹介されましたね。それに対する感想やコメントなどいただけますか?
情報学類 4年 登 大遊さん
これまで数多くの雑誌記事等でとりあげていただけましたが、先日の朝日新聞の記事は、その中でも特に詳しくかつ正確に紹介していただいたものであり、大変感謝しております。なお、「世界への挑戦状」ということになっていますが、自分としては、それほど挑戦とか競争とかを望んでいる訳ではありません。最終的に目指すのは、この社会全体の幸福度をコンピュータの技術を発展させることによって大きく向上させることです。
ところで、米国の大学 (例えばスタンフォード大学) では、学生は卒業後、まずベンチャー企業を起業しようとして、それでうまくいかなければ仕方が無いので中小企業に就職し、中小企業にも就職できなかった人は、やむを得ず、大企業に就職するという文化があります。このような文化の下で、米国はコンピュータ技術における主導権を取ることができるような優秀な技術者が育ってきた訳ですので、日本もこれと同等程度のレベルに追いつくためには、大学の持つべき、学生のベンチャー起業を推進する役割というのは非常に重要であると考えています。
筑波大学は、日本国内ではベンチャー起業数が極めて多いほうであるという統計がありますが、実は、それは教員や卒業生が設立した大学発ベンチャーが多いということであり、学生が在学中に設立したベンチャーはまだごく少ないのが現状です。米国に追いつくには、これをもっと米国並みに増やしていかなければならないのではないかと考えています。
Q. 大学での日常はどのような感じですか?高校と大学でどのように生活が変わりましたか?
大変充実した毎日を過ごしていると思います。筑波大学の周辺には、東京にあるような一般の学生が楽しめる娯楽施設のようなものは少ないと思いますので、そのようなものを求める人にとってはつまらないかも知れませんが、何か好きなことの研究に集中したり、新しい技術を学んだりするようなことを積極的に行い、それについて喜びを見出せるような人にとっては、そういう意味での娯楽は筑波大学の中に溢れていると思います。色々な大学の話を聞いていると、どうも最近は、管理のためとか治安のためといった理由で、夜中まで大学の研究室にいて研究するといったことができる大学は、比較的少なくなってしまったような感じがします。しかし、筑波大学は基本的に24時間365日開いているというか、そもそも塀というものがないので、常に中に誰か学生や面白い先生がいて何かをやっています。そのような環境でそこ素晴らしい研究ができる訳であり、そういった環境を提供してくれている数少ない偉大な大学の1つだと考えています。
Q.大学の授業と会社の経営の両立は大変と思いますが、どのような工夫をされていますか?
私が会社を起業したのは2年生のときですが、その前後から、このままだと4年生になる頃にはとても多忙になるので、1・2年生の間に、3年・4年用の専門科目と呼ばれる単位を多数取っておこうと考えました。大抵の3年・4年用の専門授業の内容は、コンピュータに関する専門的な内容になっており、自分では以前からそれに関する知識を持っていたところが大きいので、あまり苦労せずに1・2年生の間にほとんどの単位をとることができました。
情報学類 4年 登 大遊さん しかし、後になってよく見てみたところ、逆に1・2年生の間に取得しておくべき1・2年生用の単位が結構不足していることがわかり、最近は卒業前であるにもかかわらず、少し苦労をして単位取得に努めています。これではあまり工夫というような解決策にはなっていないと思いますが、一般的にみて、情報科学類で行うコンピュータの授業は、IT関係の企業で行うプログラミング等の業務によく関連しているので、片方ができればもう片方もあまり苦労せずに行えると思います。
Q.現在、プログラム開発以外で興味を持っていることはありますか?
興味を持っていることは非常にたくさんありますが、最近特によく考えていることについていくつか述べます。まず、来年から私は大学院生になりますが (注: 卒業できた場合)、筑波大学に入ってきた後間もない1年生・2年生などをより積極的に支援することを行いたいと考えています。せっかく筑波大学には学術研究のために役立てることができる多くの研究設備や面白い教員等の資源が豊富にあるにもかかわらず、入学して間もない学生は、それの利用方法についてよく知らないと思います。特に、多くの場合は4年生の時、研究室配属になってはじめて大学の資源を活用して自分の研究ということを行えるようになります。しかし、一部の学生は、1年生・2年生のときでもすでに何か新しいことを研究したいと考えているようです。その中でとても積極的な人は非公式にどこかの研究室に入ったりしているようですが、よりそのような機会を増やしたほうが良いのではないかと考えています。そのため、可能であれば今年の4月ごろから、そういう人たちが集まって積極的に研究開発を行うことができるようなスペースを大学内で用意してみたいと思います。
次に、昔から高出力のレーザーに興味があります。小学校のころ、図書室で適当に本を読んでいたら、「小学生でもわかるレーザーの仕組み」のような本があり、それを読んでレーザーはとても面白い性質を持つものだと思いました。そこで、将来は何かレーザーをうまく利用した研究か何かをやりたいと実は思っていました。今でも、高出力レーザーを使って、二点間の空中でのコンピュータネットワークのための通信を行うような装置を安価に作ることができればいいと思っています。しかし、最近はコンピュータばかりやっているので、そういった物理的なことについては少し興味が薄れてしまいました。昔 (小学生のころ) はプログラミングよりも電子工作や物理的なことについての興味のほうが大きかったので、将来はまたそっちに戻る可能性もあると思います。
最後に、最近車を入手しましたので、色々な面白いところを見て廻るのが面白いと感じています。筑波大学から1時間程度で行けるところであれば、加波山の風力発電装置と靴の道、鹿嶋港の東京電力発電所排水溝付近(座礁船もある)、霞ヶ浦総合公園、笠間ダム、KDDI電波送信所および大竹海岸など、有名なスポットがあります。
Q.筑波大学の魅力はどんなところでしょう?
一般的に、高校のときは普通に勉強をしていれば大学に入れると思いますが、大学に入った後は普通に授業を受けているだけではなく、何かとても専門的なことをしなければとてももったいないと思います。大抵の場合、専門的なことを集中してやっていると、普通の人がそれを見てこれの何が面白いのかよくわからないとか、大学生の間はもう少し普通の娯楽をすればより面白いだろうに、と思ってしまう程度のことというのが多い気がします。たとえば、情報科学の分野で、非常に複雑で専門的なプログラムのソースコードを読んだり書いたりしているときは、その人を普通の人が横から見ると、この人はとても頭がおかしい人だなと思われてしまいますが、実はそういうときにそのおかしく見える人がやっている研究というのは素晴らしい成果を挙げる可能性が高いのであります。そういった学生や教員が、なぜか筑波大の情報関係のところには多いようです。これは大変素晴らしいことです。
しかし、そういった、通常の娯楽などには対してあまり興味が無く、専門的で特殊なことばかりやっているような人は、東京等にある一般的な卒業後はほとんどが普通に就職するような大学に行くと、周囲からとても敬遠させて過ごしにくい羽目になる危険性があります。そういう人こそ、是非筑波大学の情報科学類に来ていただければ、大変充実した、幸福な日々を送れるに違いないと思います。もちろん、現在の段階で、特にどのような研究をしていこうかというような方向性をまだ持っていない人もとても歓迎されると思います。最初はそのような状態でも、そのうち周囲に前述のような人達が比較的たくさんいると、それに影響を受けて、同様に自分から積極的な研究を始めようと思えるようになる可能性が高いと思います。そういった影響を受けることができるのも筑波大学情報科学類の大変素晴らしいところだと思います。私もこの大学に入ってから約4年になりますが、その間に見た面白い教員や職員から多大な影響を受けました。
Q. これから筑波大学情報科学類を受験しようとする高校生の向かってメッセージをお願いします。
情報学類 4年 登 大遊さん筑波大学情報科学類は、これまで述べたように、豊富な研究環境を活用できたり、面白い教員方に出会えたりする可能性が高い、大変素晴らしい環境であると思います。入学してコンピュータについて学んで、それを生かして就職するのも良いと思いますし、新しいことを創造するために研究者になっても良いと思いますし、また何人かの学生のように自分で会社を起業してそこに就職したことにしながら大学院へ行って研究をしても良いと思います。
どのような進路を取りたい場合でも十分な環境および機会が揃っているのが情報科学類であり、またここに在籍している間に他の人から影響を受けて、より積極的に何か新しいことをしたいと考えるようになる可能性も高いと思います。
是非、筑波大学情報科学類に入学して、情報処理が最重要なものの1つとなっている現代社会の発展を支えましょう。
どうもありがとうございました。